TrashyHeaven’sDiary

主に読書記録とか

少し素敵な読書の仕方。あるいは、小説=リンク集 論。

五木寛之『青年は荒野をめざす』を読んだ。桜庭一樹『荒野(の恋*1)』の第一部を読み終わったあと、いうタイミングである。このタイミングこそが大事だった。
『荒野(の恋)』の第一部のラスト、主人公の少女・荒野は、恋の相手である少年・悠也から彼の愛読書であった『青年は荒野をめざす』を押し付けられるのだ。一部と二部の間には一年の時が流れている。多分、荒野はこの一年の間に、この本を読んだに違いない。その気持ちとシンクロできたら素敵だと思ったのだ。
結果、そんな“不純な”動機なんて吹き飛ばすぐらいに『青年〜』は面白かった。それはそれで、素敵なことだ。
昔から、小説というものはリンク集みたいなものだと思っている。一作の小説から、次へ次へと派生して、広がっていくことができるからだ。野村美月の「文学少女」シリーズなんてその際立った例だと思う。そしてまた、リンクされた行き先は、小説とも限らないとも思う。
『荒野(の恋)』の途中で『青年は荒野をめざす』を読んで、『“文学少女”と死にたがりの道化』を読んで『人間失格』を読み直し、「戯言シリーズ」から「ジョジョ」にハマり、『ブギーポップは笑わない』から「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を、『水没ピアノ』から「中村一義」を、『瑠璃城殺人事件』から「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴く―――。
そんなにあからさまなつながりで無くたって良い―――魔法で月を目指す『アストロノト!』から、現代科学で月に結婚式場を建てる『第六大陸』を読んだって良い。BGMは「Fly me to the moon」だ。
あるいは、『空の境界』から『コクトー詩集』を読んだって良い。
もっと連鎖しても良い―――滝本竜彦から大槻ケンヂへ行き、「筋肉少女帯」を聴いたって構わない。
ともかく、そんなふうな、繋がる読書をしていけたら良いなと思う。

*1:ファミ通文庫版タイトル