- 作者: 五木寛之
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/05/09
- メディア: 文庫
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「男たちは常に終わりなき出発を夢みる。安全な暖かい家庭、バラの匂う美しい庭、友情や、愛や、優しい夢や、そんなものの一切に、或る日突然、背を向けて荒野をめざす。だから彼らは青年なのだ。それが青年の特権なんだ」
プロのジャズメンをめざす青年・ジュンは東京からソ連・ナホトカへ、そして、モスクワ、ヘルシンキ、パリ……と様々な場所で、様々な経験を積んでいく―――。
侮っていた。3、40年も前に流行った青春小説で、今とは全然状況も環境も違うだろうし、そもそもジャズに興味がないし、どんなものかもわからないし……だなんて、思っていた。
一読、強烈な打撃を喰らった。共感と憧憬と焦燥をごちゃ混ぜにしたみたいな感情が押し寄せて、今すぐここじゃないどこかへ、荒野へ行きたい気持ちが、確かに胸に飛来した。
傑作とは、時代によって風化しないものをいうのかもしれない。