TrashyHeaven’sDiary

主に読書記録とか

砂漠

砂漠

砂漠

「僕たちは、こういうことで費やすのが嬉しいんだよ」
「そう。これがわたしたちの望んでいたイベントなの」

社会という砂漠に浮かぶ大学という名のオアシスの、四人の男女の物語。
率直に、面白かったです。最後の、今までの何気ない文章さえも活かした一文は最高でした。
しかしながら、これを読んで、なぜ自分が伊坂幸太郎に「作家買いするほどには」熱中しないのかも、少しだけわかりました。
 『砂漠』には、西嶋という、自意識と主義主張が過剰で、思春期の全能感の中にある男が登場します。彼は、過去には孤立して/いじめられていて、その鬱憤を万引きで晴らしていたような男です。その西嶋が主人公なのではなく、ある種飄々とした北村が主人公であることが、僕が伊坂にハマらない理由なのではと思いました。
 森見や滝本なら、確実にこの西嶋が主人公で、そのうじうじぐだぐだ考えて迷走する様を書くでしょう。しかし、伊坂はそれを書きません。彼が、悩みとかそういうものを書くときは、その対象から一定の距離を置いているような気がします。だから悪いとか、そういうんではなく、僕としてはもっとぐちゃぐちゃ悩んでるようなのを読みたいんだなーという話。端的に言うと、「カッコよすぎんだよテメェら!」みたいな。