- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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「俺のことを情けないと思うんやったら、先輩が身をもって教訓を垂れてくれたと感謝せえ。――自分の気持ちを正直に受け止めて、チャンスがあったら逃がすな。判ってるんか?」
真剣な目で言われ、「はい」と答えた。
15年ぶり(!)の江神シリーズ(学生アリスシリーズ)新作長編。15年前、僕は5歳ですよ。江神シリーズ前3作を読んだのは中学生の頃なので、13〜15歳。僕の待ち時間は5〜7年ですか。これでも結構長いですよね。
急成長を遂げた宗教団体「人類協会」。宇宙からの来訪者に思いを馳せる彼らの聖地であり、宗教都市の様相を見せる小村、神倉。そこに聳えるは、寒村には似合わぬ異形の“城”。そこへ向かったきり帰ってこないEMC部長・江神を心配したアリスにマリア、就活中の望月と織田は一路神倉へ。やがて、彼らは城で殺人事件に遭遇、囚われの身に―――。
正直、不安でした。なにせ、15年ぶり。その月日は、良くも悪くも作者の内面を変えているハズです。この新作にいるEMCメンバーは、果たして、第三長編『双頭の悪魔』で別れた彼らと同じなのか。そう考えながら、ページを繰りました。結果―――、彼らはきちんとそこにいました。以前と変わらずに。
この作品は、優れた本格ミステリであると同時に、優れた青春小説です。2段組500ページを殆んど一気読みさせる力があります。
EMCメンバー皆に活躍の場があったり、江神さんだけに推理をまかせないあたりに、学生アリスらしさを感じられて、シリーズファンとしては嬉しい限りです。
また、この『女王国の城』は今までのシリーズになかった要素が盛り込まれました。“時代”です。バブルが霞む予兆が現れはじめた時代が、この一冊に詰まっていました。
江神さんがどう人生と向き合うのか、アリスとマリアの関係はどうなるのか。青春小説としての伏線が、今後も回収されることを願います。もう15年待つのは勘弁ですが……35歳になっちまいますよ。