- 作者: とみなが貴和
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/12
- メディア: 文庫
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「これは、わたしのためじゃない。子どもと、犯人のために、頼むんだ」
プロファイラー大滝錬摩が活躍するEDGEシリーズ、第二巻。今回は誘拐です。
ミステリで重要な要素とは、何をおいてもそこに存在する“謎”ですが、ただただ単純に“謎”だけを楽しみたいのならば、パズルブックでも買って読んでいろ、という話になるわけで、なぜミステリを小説という形で読みたいのかという疑問には、「謎を魅力的に演出し、駆動するための物語が必要だから」という風に答えるのが適当でしょう。
さて、世のミステリには、初めっから犯人がわかっている形式というものがありまして、それは倒叙形式と呼ばれています。有名どころをあげれば、ドラマですが、コロンボや古畑なんかがこれにあたります。
このEDGEシリーズもその系譜に連なる作品で、犯人の側の行動と、探偵側の行動が、ともに書かれています。つまりは、そこにトリックやらなにやらが介入する余地はなくて、ひたすら物語のみが読者を引っ張っていくことになるわけです。
こういう小説で物語がチープだったら読めたものじゃありませんが、このシリーズは、犯人の心情と探偵の心情が丁寧に書かれていて、とても面白く読むことができます。
ホワイトハートで出版されて完結したものを、講談社文庫版として新装刊しているので、定期的にテンポ良く出版されることになるでしょうが、それが待ちきれないほどに面白いシリーズです。