- 作者: 谷原秋桜子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/11/30
- メディア: 文庫
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「何しろ一晩寝ているだけで、五千円ももらえるんだからね。こたえられないいいバイトだ」
富士ミスがLOVE寄せする前に刊行されていたシリーズの、出版社を移しての新装版。
読んでみて、この作品がライトノベル読者に受け入れられなかった理由がわかった気がしました。この作品は、“厳しい”んです。世の中でウケているラノベの中での厳しさって言うのは、SF的・伝奇的なモノの影響下での厳しさか、そうでなければ、青春のどす黒い厳しさか、恋愛における厳しさだと思います。
対して、この作品で扱われている厳しさって言うのは、“社会的な人間関係における厳しさ”です。主人公・美波がコンビニのバイトをやめさせられる事件(これによって多額の借金を背負う)や、次のバイト先で出会う社員の青年からのいびり、さらには看護師が抱える悩みなどには、なんというか、大人の人間のいやらしさがリアルに出ています。こーゆーのが、当時のラノベ読者にあまり受け入れられなかった原因なのではないかと思います。
読み終わった感想としては、ミステリとして、中々に出来のよいものだった、という感じです。主人公の立ち位置が少し独特なのも特徴ですかね。