- 作者: 沙藤一樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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「俺の、この声を聞いてる、あんた……」
ゴミに埋もれた横浜ベイブリッジで見つかった少年の死体。彼が持っていた一本のカセット・テープ。そこには、ゴミに埋もれた地に捨てられた少年の生活が吹き込まれていた……。会議室に集まる人々の前で流されるその内容とは……?
幽霊もゾンビも呪いも超能力も殺人鬼も出てこないホラーという、世にも珍しいものがここにある。人間が怖い、というような単純なものではなく、ここで扱われるの恐怖は「生への執着」だと思う。生きたいと願う、誰もが持っているその気持ちが、怖いのだ。
テープを再生しているという状況を如実に想像させる文体と、少年の息遣いが聞こえてきそうな語りとがが、その恐怖を伝えてくれる。