夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

「だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。おまえにはノイズにしか聞こえないだろうけど、このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思ったときにはもう聞こえない。おまえ、いつか絶対、あの時聞いておけばよかったって後悔する日が来ると思う」

全校生徒が夜を徹して歩き続けるという「歩行祭」。それは、高校生活最後のイベント。理不尽な伝統行事。だけど、その中にある生徒たちは歩く中で、様々なことを感じていく――。
言わずと知れた、恩田陸の本屋大賞受賞作。
いい感じな青春小説でした。たった二日間の出来事なのに、とっても濃密。合宿やら修学旅行の夜やらの雰囲気をよく表していると思いました。
けれど、僕にとっての恩田さんの小説は、ずっとデビュー作の『六番目の小夜子』のような気がします。上記に引用した台詞の前に、本を例えにした、タイミングの話があります。小説にしても、なにかの経験にしても、それを受け取る時期っていうのは凄く大切です。
　もし、僕が高校生かそのくらいの時期にこれを読んでいたら、とても印象深く僕の脳裏に焼きついたような気がします。そう考えて、思いました。大学に入ったことで、僕って成長したんだなぁ、と。
　時間が進んでいくことは止められないし、成長を拒否することも出来ません。だから、どうでもよさそうな一瞬一瞬を、作中の言葉を借りれば“ノイズ”であるそれを、受け取っていかなきゃならないんだと思います。